無表情なコウモリは繊細カメレオン

説明などない。裏も表も縫い目は縫い目。

隙間収納の達人。

自分の歯に何か足りないと感じたのは、まだ乳歯しかない頃でした。

私の歯はどうも、本数は足りているはずなのに歯と歯の間、その隙間に一本ずつ植えていけそうなほど、隣との距離をとって生えているのでした。

歯の専門医は言いました。

「永久歯が生えれば解決するから気にしなくてもいい。」

と。

永久歯とはなんてロマンチックな響きなのだと、幼い私は感動しました。

 

その壮大なロマンスの響きを湛えた白い歯は、期待に応えてくれることなくやはり同類嫌いのようでパーソナルスペースをたっぷりとって生えてきました。

 

歯よ、永久の門歯よ。周りを見渡すが良い。いつもいつまでも孤独なその身を省みるが良い。

 

見かけの悪さに加えて食べた物がとことん隙間に収納されていくことに我慢できなくなった私は、その心の隙間にも似たスペースを埋めるべく、稼いだ紙幣をどんどん歯科医につぎ込みました。

 

長い年月私の口唇が受け入れる物と闘ってきたそれらの中には、欠けたり溶けたりしたものもおりました。

 

戦友、それは安っぽい言い方かもしれません。

門番。騎士。

 

 

 

とにかく、明日は隙間を埋めている化学物質のメンテナンスのために勇気を出して歯医者さんに行ってきます。